あなたは、次の2つのオレンジジュース(A:ポンジュース、B:トロピカーナ)をブラインド(目隠し)で飲み比べた後に、

「この2つのジュースは同じですか?違いますか?
と聞かれたら、何て答えますか?

「2つともオレンジジュースだから、同じ!」と答える人もいますし、
「味がちょっと異なるから、違う!」と答える人もいるかと思います。

今日の話のメインである「Thurstonian Model(サストニアンモデル)」は、この答え方の違いに関連しています。
この概念は、普通の人の頭にはない(というか、普通は考えない)とても面白い概念だと思います。

 

 

 

今日の話は、前回の続きとなります。
まだ読んでない方は、ぜひ、まず先に前回の記事をご一読ください!

 

 

前回の記事では、下の図に示す「3点識別法」と「3点比較法」で質問した場合、どちらも、あてずっぽうで答えた場合の正答率は同じ(3分の1)はずなのに、正答率が大きく異なることを説明しました!

 

この結果については、複数の文献(Byer&Abrams 1953、Stillman 1993、Tedja et al. 1994、Rousseau&O’Mahony 1997)にて確認されています。

 

 

では、なぜ「3点識別法」と「3点比較法」では正答率が異なるのでしょうか?

今日は、この理由について、「Thurstonian Model」と言われる概念を用いて、いろんな例題を交えながら、なるべく分かりやすくお伝えいたします!

 

 

 

 

 

さて、冒頭の問題に戻ります。

この質問をした場合、多くの人が、「違う!」と答えます。

同じようなオレンジジュースと言っても、そこそこ味も違いますし、当然と言えば当然ですね。
(ポンジュースの味の詳細についてはこちらの記事をご参照ください)

 

 

 

では次の問題です。

次の3つのジュース

A:ポンジュース
B:トロピカーナ
C:カルピスウォーター

を飲み比べて、「どれが違う?」と聞かれたら、何と答えますか?

 

ほとんどの人が、C (カルピスウォーター)が違う!と答えます。

つまり、「AとBは同じ」とみなしているのです。

 

冒頭の問題では、「ポンジュースとトロピカーナは違う!」と答えた人でも、
この3点識別の問題になると、「ポンジュースとトロピカーナは同じ」と答えていることになります。

 

つまり、3点識別法は、実質的には
「3つの中で、違うもの」を聞いている、というより、
「3つの中で、最も違いの度合が大きいもの」を聞いているのです!

 

 

 

さて、次の問題を考えてみます。

同じように調製した10%の砂糖水2個を飲み比べて、
「この2つは同じ?違う?」と聞いたら何て答えますか?

 

これは、ほとんどの人が「同じ!」と答えますが、「違う」と答える人もいます。

砂糖水を準備した人にとっては「同じ」ように作っているので、「同じ」が正解?と思いきや、「違う」と答えても、決して間違いではありません。

 

なぜなら、ミクロレベルで考えた時に、全く同じではないからです。
この10%の砂糖水について、コップにそれぞれ注ぐときに完璧に均一になっているわけではないでしょうし、注ぐ時の空気の巻き込み方や、コップ表面での水分の蒸発度合など、こまかーく考えれば、2つが完全に同一とは言えません。

また、飲むときの口の中の環境(唾液の量)や、体調の違いによっても、感じ方は変わってきます。よって、同じ10%の砂糖水を飲み比べた時、「全く同じものだ」と感じなくても、ある意味当然とも言えますし、言い方を変えれば、味覚が優れてる人ほど、「同じように作ったものでも違うと感じる」とも言えます(なんか矛盾しているようですが笑)。

 

もう少し噛み砕いてご説明すると、
この「作り手が砂糖10%になるように調製した水」を飲んだとしても、「これは、絶対10%の砂糖水だ!」とはなりません。
「10%が一番可能性高いかな。9%か、11%くらいかもしれん。もしかすると8%か、12%くらいかも」となります。

 

この感覚を図に表すと、下のようになります。

このように、濃度の感じ方の可能性について、波のようなイメージになります。

 

 

 

では、次の3つ

A:10%の砂糖水
B:10%の砂糖水
C:11%の砂糖水

を飲み比べた時は、どのように感じるでしょうか?

 

 

これも先程と同様、波のような感じ方のイメージになります。

 

 

 

さて、ここで改めて問題です。

この3つの砂糖水について、「どれが違う?」と聞かれた場合(3点識別法)はどうなるでしょうか?

 

高確率で、上図のようになり、
「AとBが同じ。Cが違う!」
と答えます。

これは、BとCの距離が、AとBの距離と比較して長いので、「Cが違う!」と考えるのです。

 

 

 

しかし、可能性は低いですが、下図のようになることもあります。

 

この時は、
「BとCが同じ。Aが違う!」
と答えます。

これは、AとBの距離が、BとCの距離と比較して長いので、「Aが違う!」と考えるのです。

 

つまり、低確率ではありますが、
本当は違う「B(10%)と C(11%)を同じ」と考え、
本当は同じ「A(10%)が違う」と考えてしまうことも十分ありうるのです!

 

 

しかし、この場合でも、
「最も甘いのはどれ?」と言う質問(3点比較法)では、「C」と答えることになります。

 

 

以上のことから、
3点識別法」と「3点比較法」では答えが異なることがあり、
「3点比較法」のほうが精度が高いと考えられるのです。

 

 

すごく長い説明となってしまいましたが、これが「Thurstonian Model」の概念をざっくり説明したものとなります。

私は「頭悪そう」「何も考えてなさそう」とよく言われますが、味覚診断(官能評価)を行う際は、このように、質問の仕方による答えの精度の違い等も考慮しながら実施してるんですよ笑。

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本日のまとめ

・3点識別法より3点比較法のほうが正しい答えを得やすい
・感じ方の可能性は、波のようなイメージになる
・私は、みんなが思っている以上に、実は色々考えてます!

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