現在は第4次激辛ブームと呼ばれているのですが、

「獄激辛」のも登場しているように、
辛さがものすごーく強いものが登場していることが第4次ブームの特徴の一つです。

しかし、辛すぎる食べ物って体に悪いんじゃないの?と思う方もいるのではないでしょうか。

今回は、激辛に含まれる唐辛子の成分「カプサイシン」の安全性について考察します。

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「食べ物が安全かどうか」ってどのように調べるのでしょうか?

実際に人が食べて調査できれば一番シンプルなのですが、
調査する過程で健康に悪影響を及ぼしちゃったらいけないので、
動物で実験したり、いろいろな指数を用いて推測したりしています。

 

今回は、激辛料理の辛味成分である「カプサイシン」の安全性について、
『ドイツ連邦リスク評価研究所でのカプサイシン関係のリスク評価』の結果をもとに、
いろいろな指数を用いて考察してみたいと思います。

 

 

半数致死量(LD50)とは?

 

半数致死量。なんだか怖い響きのある言葉ですね。

その名の通り、
半数致死量とは、1回の投与で動物の半数が死んでしまうと予想される量のことを言います。

 

カプサイシンについては、以下の記述があります。

急性毒性について、マウスの経口摂取での動物実験から最も低い半数致死量(LD50)を60 - 75 mg/kg bwとしました。

 

つまり!

体重1kgあたり60~75mgのカプサイシンを与えると、マウスは50%の確率で死んじゃいますよ!
ということです!

 

※マウスではないですが、、、仮に体重60kgの人の場合で考えると、

60~75くらい×60≒約4,000mg
のカプサイシンを摂取すると半分くらいの可能性で死んじゃう!ということになります。

 

 

 

無毒性量(NOAEL)とは?

 

無毒性量とは、動物実験において有害作用が認められなかった量のことを言います。

 

カプサイシンについては、以下の記述があります。

ヒトでの疫学調査から胃の細胞の剥離についての経口摂取での無毒性量(NOAEL)を8.3 mg/kg bwとしました。

 

一般的には、無毒性量は動物で実験するのですが、ここでは「ヒト」で実験しているようです。

実験結果によると、体重1kgあたり8.3mgの量、

例えば体重60kgの人だとすれば、8.3mg×60=約500mg

までは有害作用が認められなかった、ということですね!

 

 

一日摂取許容量(ADI)とは?

 

先ほどの無毒性量が「安全性」ってことでいいんじゃないの?とも感じるかもしれませんが、

無毒性量は、あくまでも(動物)実験による結果を示したに過ぎないため、
確実に安全、とまでは言い切れません。

 

そこで、ヒトがある物質を毎日一涯にわたって摂取しても悪影響がないとされる量、として
一日摂取許容量(ADI)を定めています。

 

一日摂取許容量の求め方は非常にシンプルで、以下の式により計算されます。

一日摂取許容量=無毒性量÷不確実係数

 

またも新しい言葉「不確実係数」が出てきました!説明します!

 

 

不確実係数とは?

 

不確実係数とは、一日摂取許容量を設定する際に、無毒性量に対して設定する係数のことで、
「種差」と「個体差」の掛け算によってあらわされます。

 

「種差」とは、分かりやすく言うと、

無毒性量ってあくまでも動物による実験で求めた値だから、動物と人間で違いがあるよね、
だから調整しとこう!という係数。

 

「個体差」とは、

おんなじ人間でも結構個人差があったりするよね、だから調整しとこう!という係数。

 

 

この種差と個体差の係数ってどうやって決めるの?と思うのですが、、

 

一般的には、「種差」も「個体差」も10としており、

だから、不確実係数は10×10=100

という、そんなざっくりでいいんかーい!と突っ込みたくなるような決め方をしています。

 

 

ただ上記の不確実係数100という値は一般的な値であり、
場合により、別途定められている場合もあります。

 

 

今回のカプサイシンのリスク評価結果に関する記述を見ると、、

 

不確実係数をそれぞれ1.7、12 - 15と推計しました。

 

とあります。

 

これは、別の調査で、

1回の食事あたりの総カプサイシン摂取量は最大5mg/kg と推定された

という結果があることから、推測された数字のようです。

 

※「無毒性量」で調査した値が8.3mg/kgだから、5mg/kgと比較すると、8.3÷5=1.7
(同じヒトで調査した結果だから、これは「個体差」の不確実係数と言えるでしょ!ってこと)

※「半数致死量」で調査した値が60~75mg/kgだから、5mg/kgと比較すると、60~75÷5=12~15
(マウスと人間の違いがあるから、これは「種差」の不確実係数と言えるでしょ!ってこと)

 

(個人的には、半数致死量と比較しちゃっていいの?とは思いましたが、、
まぁ一般的な種差の不確実係数である「10」より多く見積もってるからよいということなのでしょうか。。)

 

 

 

前述のそれぞれの不確実係数を基に、カプサイシンに関する不確実係数(掛け算)を求めると、

1.7×12~15くらい≒約25

 

となります。

 

一般的な不確実係数が「100」であることと比べると、
今回求めたカプサイシンの不確実係数は「25」となり、

およそ4分の1ですので、一般的なものより不確実性がかなり低く設定されている、と言えます。

 

 

えっと、結局どういうことなんだっけ?

 

長々と式の意味などを述べてきましたが、、結論として
カプサイシンの半数致死量、無毒性量、一日摂取許容量は以下のように考えることができます!

 

半数致死量(LD50)・・・約4,000mg (マウスの場合)

無毒性量(NOAEL)・・・約500mg

一日摂取許容量(ADI)・・・約20mg (500÷25として計算)

※体重60kgの人の場合

 

 

これらの重さは、実際にはどのくらいの量なのでしょうか?

 

カプサイシンが多く含まれる唐辛子「鷹の爪」を例に考えてみます。

 

 

鷹の爪

 

 

唐辛子のポピュラーな品種である「鷹の爪」。

 

農林水産省HPには、

鷹の爪1本(平均重量約1g)に含まれるカプサイシンの量は約1mg

との記載があります。

 

カプサイシンの一日摂取許容量が約20mgでしたので、

鷹の爪は1日に20本まで食べても大丈夫!安全!

ということになりますね!

 

20本ってかなりの量なので、、意外とたくさん食べてもいいという計算になります。

 

 

また、無毒性量の基準で言えば500本までが許容範囲となります。
(ただしこの基準は絶対的な安全性を示すものではないので注意が必要です)

 

さらに言うと、半数致死量(マウスの場合ですが)は、鷹の爪4,000本分となります。
(日常で4,000本も食べることはないと思いますが、、食べすぎには気を付けましょう)

 

 

以上、本日は激辛料理に含まれるカプサイシンの安全性のお話でした!

 

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本日のまとめ
・安全性の基準には半数致死量、無毒性量、一日摂取許容量がある。
・辛味(カプサイシン)は、鷹の爪換算で1日に20本までは安全、と言ってもよさそう。

・とはいえ食べ過ぎると胃の粘膜が傷ついて荒れることがあります。気を付けましょう。
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