食べ物の嗜好性と味覚感度の関係
(味覚が良い人の方が好きと感じやすいかどうか)は、
誰かがしっかりと研究してもよさそうなテーマなのにそれほど研究が進んでいない分野、
と言えるように思います。
かくいう私たち日本味覚協会でもそれほど数多く調査を実施できていないのですが、
今回は「うま味」をテーマとして、
「だしの嗜好度とうま味感度」について調査を実施しましたので、結果をご紹介します!
これまで当協会が実施した嗜好度と味覚感度の関係の調査では、
(味覚感度については「味覚検定チョコ」を活用するなど、実際にその場で飲食してもらって調査をするのですが)
嗜好度については、その食べ物が好きかどうかを「アンケートで聞くだけ」の形をとることがほとんどでした。
※「味覚検定チョコ」は食べるだけで自分の味覚が良いか悪いかをチェックできる新感覚のチョコレートです。
今回の調査では、うま味の嗜好度についてもより精密なデータを取るために、
実際にその場で市販の「だしスープ」を飲んでもらい、
美味しく感じたかどうかを10段階で評価してもらう、という形で調査を実施しました!
(粉末のだしにお湯を入れてあたたかいスープとして飲んでもらう形)
127名の方を対象に調査を行いました。
ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。
まず、うま味感度を測定するテストについて、「年代別」「性別」の結果を示します!
(縦軸はうま味感度のテストの正解率を表しています)
年齢については、
一般的に若い方が味覚が良い(味蕾が減少するため)とされているのですが、
※参考記事:味覚は衰える?~年齢と味蕾の数の関係~
今回の「うま味」のテストでは、40代~50代の方の味覚が一番良いという結果になりました!
過去に実施した「苦味」に関する調査でも、
若い方が味覚が良いとは言い切れないという結果がでていましたので、
※参考記事:苦味感度と年齢の関係は?~若い方が味覚が良いわけではない?~
特に苦味やうま味は、味蕾の減少を食経験でカバーしやすい味と言えるのかもしれませんね。
また性別については、女性の方が若干味覚が良いという結果が出ています。
女性の方が味覚が良い、という点は、
他の多くの論文や文献、及び当協会の他の調査でも明らかになっている点ですので、
こちらは一般的な結果が出たな、という感じです。
続いて、だしの嗜好度とうま味感度の関係についての調査結果です!
実際には、嗜好度を10段階で調査したのですが、ここではわかりやすく示すため
1~3:嫌い
4~7:どちらでもない
8~10:好き
と区分しています。
その結果、
だしを好きな人の方が、うま味感度が高い
という結果となりました!
また、どちらでもないと評価した人が一番うま味の感度が低い、
という点もちょっと面白いかなと思います。
好きか嫌いかはっきりしていた方が味覚が良い、ということが言えますね。
なお、過去に実施した「和食/洋食好きとうま味感度に関する調査」
※参考記事:「和食好きな人」と「洋食好きな人」はどっちが味覚が良い?~うま味と和食の関係~
でも、和食好きな人の方がうま味感度が高いという結果が出ていましたので、
だしは和食と密接な関係にあることから、
今回の調査結果は過去の調査と整合性のとれた結果である、と言えるのではないかと思います。
以上!本日はだしの嗜好性とうま味の味覚感度に関する調査結果でした!
今回は「うま味」をテーマとしましたが、
その他の基本五味(甘味・塩味・酸味・苦味)についても同様に調査を実施していますので、
またの機会にご紹介させていただきたいと思います!
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本日のまとめ
・だしが好きな人は、うま味の味覚感度が良い。
・今回の調査では、うま味の感度は40~50代が一番高い結果。
・日本味覚協会では「旨味」ではなく「うま味」と表現するルール。
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