フグには、毒があることが知られていますよね。
毒の名前はテトロドトキシンと言い、青酸カリの500~1,000倍の毒性を示す猛毒です。
(名探偵コナンにもよく登場しますね)
毒を取り除けば食べられますので、人間にとってフグは美味しいのですが、
実は、フグの毒はフグにとっても美味しく感じる?という説が最近明らかになりました。
詳細をご紹介します。
休暇を利用して、愛知県の名古屋市科学館で開催されている特別展「毒」に行ってきました!
参考記事:特別展「毒」 <オフィシャルHP> (dokuten.jp)
展示の一つに「フグはフグ毒が大好き」というものがありました。
一般社団法人日本味覚協会に所属している身としては、
「えっ、フグにとってフグ毒って美味しいの?」とものすごく興味を持ちましたので、
今回はフグ毒についてまとめたいと思います。
フグ毒って何?
冒頭でも述べましたが、フグの毒はテトロドトキシンといいます。
化学式はC11H17N3O8。TTXとも表されます。
厚生労働省によると、人の致死量は1~2mg。
フグによる中毒症状は食後20分~3時間程度の短時間で現れます。
フグってなんで毒化するの?
フグは自分自身で毒を産み出しているわけではありません。
詳しくは明らかになっていませんが、
・海洋細菌のいくつかの種類がテトロドトキシンを産み出している
・小型の貝などがこれらを食べる
・フグがその貝などを食べる
ことで、フグにテトロドトキシンが蓄積される、と考えられています。
※参考記事:ふぐとふぐ毒 東京都保健医療局 (tokyo.lg.jp)
※そのため、毒を産出しないエサだけを食べて養殖したフグは理論上「無毒」になります。
(ただし実用化レベルには至っていないので現在は全てのフグについて毒を取り除く作業が必要)
フグはなんで自分の毒で死なないの?
テトロドトキシンは、細胞の表面にあるナトリウムチャネルと呼ばれるたんぱく質に結合することで中毒化するのですが、
フグのナトリウムチャネルの構造は人間と異なっていて、
テトロドトキシンと結合しないようになっている、と考えられています。
そのため、フグ自身がテトロドトキシンを摂取しても毒で死ぬことはありません。
フグはテトロドトキシンが好きなの?
テトロドトキシン自体は無味無臭なのですが、
無毒のフグと有毒のフグを一緒にすると、無毒のフグが有毒のフグにかみつく、
などの毒を取り込もうとする現象が見られたので、
テトロドトキシンは、フグにとってフェロモン的な何かなのか?
というような仮説が過去に有力視されてきました。
しかし、2022年に、
フグは、テトロドトキシン(TTX)ではなく、
無毒の類縁体(※)5,6,11-トリデオキシTTX(TDT)を匂いとして感じ、その匂いに誘引される
という、これまでの定説を覆す発見が報告されました。
※類縁体とは、ある化学物質と構造が似ているが、一部の構造が異なる化学物質のこと。
参考記事:新発見!フグは無毒のフグ毒の「匂い」を嗅ぐことが出来る – 名古屋大学研究成果情報 (nagoya-u.ac.jp)
※国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院生命農学研究科の阿部 秀樹 准教授、安立 昌篤 講師(当時。現在:東北大学大学院薬学研究科 准教授)、西川 俊夫 教授らの研究グループが発表した報告による。
有毒であるフグは、テトロドトキシンに近い物質の「匂い」につられて、
有毒のテトロドトキシンを食べたくなってしまう、ということですね!
以上!本日はフグの毒、テトロドトキシンに関するお話でした!!!
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本日のまとめ
・フグ毒であるテトロドトキシンは猛毒。フグは自分自身では毒を作らない
・フグはテトロドトキシンに近い物質の匂いに誘引されてテトロドトキシンを摂取する
・危険な香りがする人は魅力的、と言われるけど、危険な香りを好む人は自身も毒を持っている
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