お酒は、ほどほどに楽しむことができれば「百薬の長」と言われますが、
飲み過ぎは「万病の元」とも言われます。
では、味覚にとってはどうでしょうか?
お酒を飲むと味覚が良くなるのでしょうか?悪くなるのでしょうか?
今回は、飲酒などの生活習慣が味覚に与える影響についてお話ししたいと思います!
味覚に関する調査や実験というのは、
多くの人を集めて、実際に食べたり飲んだりを何回もさせないといけないので、とっても大変です。
(私たち日本味覚協会でも実施するのですが、ほんとに手間がかかります)
ですので、苦労して行われた味覚に関する実験には脚光を浴びてほしい!と常々思っています。
そこで!
今回は生活習慣と味覚の関係を調査した論文をご紹介したいと思います。
(引用:原田まつ子他「若年女性の味覚感度低下と食生活習慣およびストレスとの関連性について」民族衛生,2016)
この実験では、東京都内の短期大学に通う女子大生84人を対象に、以下のような調査を実施しました。
1.味覚の調査を実施
→被験者を「味覚妥当群」と「味覚感度低下群」に分類
2.生活習慣と味覚の関連を調査
→「味覚感度低下群」の人がよく行う生活習慣を解析
3.栄養素と味覚の関連を調査
→「味覚感度低下群」の人が多く摂取/少なく摂取している栄養素を解析
今日は、主に上記2の「生活習慣と味覚の関連」について詳細を解説したいと思います!
味覚が悪い人は、一体どんな生活をしているんでしょうか?
さっそく結果を発表します!
飲酒習慣がある人は味覚が悪い
今回の実験では、飲酒習慣がある人は味覚が悪いという結果(5%水準で有意)になりました。
※「5%水準」とか「有意」って何?っていう人は以下をご参照ください。
参考記事:世界一わかりやすい「統計解析」の基本~有意水準と有意確率(P値)とは~
なぜお酒を飲むと味覚が悪くなりやすいか、という点についてですが、
そもそも味覚が悪くなる原因として「亜鉛不足」が考えられます。
※本論文の栄養素と味覚に関する調査でも、
・亜鉛摂取量が少ない人は味覚が悪い
という結果が出ています。
また、お酒を飲むことで
・アルコールを分解する過程で体内の亜鉛が使われてしまう
・アルコール摂取により尿中の亜鉛排泄が促される
と考察されています。
サプリメント摂取習慣がある人は味覚が悪い
これは意外な結果でした!
サプリメントで様々な栄養を摂取することのデメリットがこんなところに出てくるとは思いませんでした。
なお理由としては、
・マグネシウムは亜鉛の吸収を妨げる役割があると考えられる
・銅や鉄、カルシウムなども過剰摂取すると亜鉛の吸収を抑制すると示唆される
と考察されています。
また、本論文の栄養素と味覚の関連についての調査でも、
・マグネシウム摂取量が多い人は味覚が悪い
という結果が出ています。
味覚にとっては、マグネシウムの摂りすぎは良くない!ということですね。
夜食習慣がある人は味覚が悪い(傾向がある)
5%水準では有意ではないですが、10%水準で有意であるという項目について、
「夜食習慣」が挙げられました。
少し話がそれますが、
本論文の栄養素と味覚に関する調査について、
・食塩摂取量が多い人は味覚が悪い
という結果が出ています。
これは、
味覚が悪い人は薄味を感じにくい→味の濃いものを好んで食べやすい
というロジックが成り立つと考えられます。
つまり、
食塩を摂取するから味覚が悪い、のではなく、
味覚が悪いから食塩を多く摂取する
ということですね。
夜食習慣についても、この点が関連すると想定されます。
夜食は味が濃いものが多い印象なので、味覚が悪い人が好みやすいと考えられます。
エネルギー生産栄養素バランスが良くない人は味覚が悪い(傾向がある)
そもそも「エネルギー生産栄養素バランス」とは何かというと、、、
エネルギーは、
炭水化物、たんぱく質、脂質
によって産出されるのですが、
「日本人の食事摂取基準」では、内訳を
炭水化物・・・・50~65%
たんぱく質・・・13~20%
脂質・・・・・・20~30%
と定めています。
この割合のことを「エネルギー生産栄養素バランス」と定義していて、
つまりこの実験によると、
上記の割合の範囲内におさまっていない人(バランス不良の人)は、味覚が悪い
と示されています。
近年はダイエット等で糖質制限が推奨されていたりもしますが、例えば
糖質(炭水化物)を制限しすぎると、味覚にとっては良くない
可能性がある、ということですね。
※エネルギー生産栄養素バランスについては、
参考記事:給食ではどのくらいの栄養を摂取できる?~日本人の食事摂取基準と学校給食摂取基準~
にも詳細が記載していますのでご参照ください。
朝食欠食/外食週3回以上/喫煙習慣の人は、特に味覚が悪いとは言い切れない
味覚が悪くなりそうな生活習慣としては、ほかに
・朝食を食べない
・外食が多い
・喫煙の習慣がある
といった項目が挙げられていますが、今回の実験では、
これらの項目に当てはまる人が味覚が悪いとは言い切れなかった
という結果になりました。
※この結果は、例えば
・朝食を食べない人は味覚が良い
と言っている訳ではないのでご注意ください。
今回の調査では対象が女子大学生ということもあり、
特に喫煙については該当者が少なすぎたために有意な結果が出なかったようにも思われます。
他の調査では喫煙と味覚には関連があるという報告もありますので、
またの機会にご紹介させていただきたいと思います!
【参考】味覚の調査ってどうやってするの?
今回の実験では、舌に溶液を垂らすという方法で味覚の良さを調べていましたが、
なかなか日常生活で味覚が良いか悪いかを調査できませんよね!
そこで!
日本味覚協会では、食べるだけで楽しみながら簡易的に味覚をチェックできる「味覚検定チョコ」を開発・販売しています!
さらに!
より詳細に味覚を検定したい!という方には、「味覚検定(3級)」をご用意しています。
3級と言いつつも想定合格率は20%とかなりの難問なので、興味のある方は是非チャレンジしてみてください。
※こちらは正式な「検定」です。合格者には認定証をお送りします。
以上!今日は生活習慣と味覚に関するお話でした!
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本日のまとめ
・お酒を飲む習慣がある人は味覚が悪い
・サプリメント摂取習慣がある人も味覚が悪い
・味覚の論文あるある言うよ、、被験者はだいたい大学生
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