先日、女性芸人ナンバー1を決めるお笑いコンテスト「THE W」が開催されました。
特に、粗品さんの審査コメントが話題となりましたね!
例年と比べ、「審査」に注目が浴びた大会だったのではないかと思います。

私たち日本味覚協会では、お笑いと、味覚の評価は非常に似ていると考えています。
「おもしろい」や「おいしい」という感覚は、
主観的でありながらも、客観的に審査することもできます。

味覚を評価する手法は、一般的に「官能評価」と呼ばれ、方法が確立しているのですが、
官能評価手法の観点で考えると、今回の「THE W」の審査方法には大きな違和感がありました!

その他、お笑いコンテスト全体の審査方法についても考察してみましたので、紹介させていただきます。

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官能評価って何?

官能評価とは、人の官能特性による評価のことを言います。

一般的には、味覚や嗅覚の評価を指すことが多く、
私たち日本味覚協会では、官能評価方法に関するセミナーや、
食品関連企業に官能評価制度を導入するためのコンサルティング等を実施させていだいているのですが、

官能特性という言葉を辞書で引くと、感覚によって区別される性質、とありますので、
例えば、車の乗り心地、みたいなものも官能評価に該当します。

つまり!
今回のテーマである、「お笑い」についても、官能評価に当てはまると考えています。

 

 

官能評価にはルールがあるの?

そもそも、「おいしい」や「おもしろい」という感覚は主観的なもので、
何を美味しいと感じるか、おもしろいと感じるか、は自由です。

そんな主観的な感覚を、客観的に評価することは、本来とても難しいことです。
そのため、できるだけ納得性の高い評価を実施するための枠組みが考えられ、
現在では一般的なルールとして確立しています。

詳細なルールを語ると大変なことになってしまうので、
ここではポイントとして
「パネル」と「評価方法」の関係についてお話しします!

 

 

パネルって何?

評価パネルとは、評価をする人たちの集団のことを言います。
つまり、誰が審査員になるべきか、ということですね。

官能評価を実施する上で適切なパネルは、2種類あります。
「分析型パネル」と、「嗜好型パネル」です。

 

一言で言うと、

分析型パネルは、少人数の専門家による評価、
嗜好型パネルは、大人数の一般人による評価、

となります。

 

ふーん、という感じかもしれませんが、
官能評価をする上で、そもそもこのパネル設定が適切にできていない会社が、実は多いのです!

当協会が過去にサポートした会社では、
例えば近所の主婦の方を4名集め、味の評価をしていた、というケースがありました。

これは、少人数の一般人による評価
であり、分析型パネルにも、嗜好型パネルにも該当しません。

よって、
・4名の方に専門的な訓練を与えて専門家に育て上げる(分析型パネルにする)

あるいは
・人数をもっとたくさん集める(嗜好型パネルにする)

のいずれかに変える必要がありました。

 

 

あるいは、管理職が評価している、という会社も結構多いですね。

管理職は専門家なのか?(そもそも専門家とは何か?)
というお話をすると長くなってしまうので割愛しますが、

適切な官能評価ができているかどうかの判定方法の1つ目は、
適切なパネル設定ができているかどうか、
という点だと覚えてもらえればと思います。

 

 

パネルについてはわかった。もう一つのポイントの「評価方法」は?

パネルには「分析型パネル」と「嗜好型パネル」があるとお話ししました。

それぞれのパネルには、ふさわしい評価方法というものがあります。

簡単に言うと、
・分析型パネルは、専門家が評価するので、詳細な(難しい)評価ができる
・嗜好型パネルは、一般人が評価するので、簡単な評価しかできない

ということです!

 

 

難しい評価とか、簡単な評価って、具体的に言うと何?

食品の評価の場合は、例えばQDA法やTI法など、専門的な名前がついている評価方法がたくさんあるのですが、

ものすごくわかりやすくいうと、
・詳細に採点することは、難しい
・2つを比較して1個を選ぶのは、簡単

といえます。

 

ここでお笑いコンテストを例に挙げるとイメージしやすいと思うのですが、

M-1グランプリのように、審査員が100点満点で採点するのは、難しい評価になります。
全員に同じ点数をつけても叩かれるし、逆に点数にばらつきが多すぎても叩かれるし、
審査をするにあたり、評価ルールの十分な理解と、責任が伴います。

逆に、今回のTHE Wのように、勝ち抜き戦で、どちらが面白いかを投票する形式は、とても簡単です。
2つを比較してどちらか一方を選ぶという形式(2点比較法)は、
官能評価方法の中で一番簡単といっていいと思います。
非常にシンプルなため、評価基準を理解する必要がありません。

 

つまり、
採点のような難しい評価は「分析型パネル」で実施すべきで、
2つを比較するような簡単な評価は「嗜好型パネル」で実施すべき、

といえます。

 

 

THE Wは何がいけなかった?

今年のTHE Wでは、粗品さんの真摯で辛口なコメントが話題となりました。
つまり、例年と比べ、「審査員が非常に専門家らしかった」といえます。

なお、この粗品さんのコメントに関する賛否は非常に話題になっていますが、
評価方法についての意見はほとんど見かけません。

分析型パネルなのに、簡単な評価(2点比較法)をしていることについて、もっとおかしいというべきだと思います。

官能評価を専門としている立場から見ると、粗品さんのコメントうんぬんの前に、
めちゃくちゃ専門家っぽい審査員が、素人でもできる評価をしている
ことが、とても滑稽に思えました。

(これは制度の問題なので、運営側が変えないといけないことです)

 

さらに細かいことを言うと、
今回のTHE Wの評価方法をまとめると、

・8組の出場者が、2グループ(4組ずつ)で勝ち抜き戦を行う。
・勝ち抜き戦は審査員(7名)でどちらが面白いかを投票。(2点比較法)
各グループの勝者が最終決戦に進む。
・さらに、敗者のうち「視聴者投票で選ばれた1組」の計3組が最終決戦に進む。

となりますが、

最後の「視聴者投票で選ぶ」という方法は、
敗者6組から1つを選ぶという方法で、つまり6点比較法となり、
これは2点比較法より難しい評価になります。
※評価タイミングも難易度を上げている要因となります。
大人数の一般人による評価では、評価基準の理解を徹底できないので、
ネタ以外の要素(例えば審査後のコメント部分)の面白さで判断されてしまったり、
あるいは人気投票になりやすい側面があります。

 

なぜ、より難しい評価(6点比較法)を嗜好型パネルで行い、
簡単な評価(2点比較法)を分析型パネルで行っているのでしょうか?

これは評価の設計方法が悪いと言わざるを得ません。

 

※なお、M-1グランプリの敗者復活戦は、これに近い方法で行っているのですが、
ファーストラウンドの勝ち抜き戦(2点比較法)は一般人200名による評価、
最終決戦(3組のうち1組を決める:3点比較法)は、専門家5名による評価、
を行っています。

この仕組みは、(どちらも比較的簡単な評価ではあるものの)
より簡単な評価(2点比較法)は嗜好型パネルで行い、
より難しい評価(3点比較法)を分析型パネルで行っているため、理にかなっているといえます。

 

THE Wは、まだ発展途上のコンテストで、年によって審査方法が変わってきているので、
近いうちに、より適切な方法へと変わっていくのではないかと思います。

 

 

ほかのお笑いコンテストの審査方法は適切なの?

この機会に、他のコンテストの審査方法をまとめてみました。

どのコンテストについても、パネルの設定方法は問題ありません。
少人数の場合は専門家が評価し、大人数の場合は一般の方が評価をしていて、
つまり、分析型パネルか嗜好型パネルのいずれかを設定できています。

 

ただ、パネルにふさわしい評価方法ができていないコンテストもあります。

歴史のあるM-1グランプリ、キングオブコントは、
審査方法も洗練されてきており、官能評価の観点から見ても適切な評価ができていると思います。

R-1グランプリも、様々な変遷を経て、現在はM-1グランプリと同じ審査方法となっていて、問題ありません。

比較的歴史の浅いTHE WとTHE SECONDについては、官能評価の視点から見ると適切な審査方法とはいいがたいです。

ザセカンドは、嗜好型パネルなので、シンプルに2点比較法にすべきだと思います。
(詳細は以下の記事にも記載しています)

※参考記事:漫才「ザセカンド」の審査方法は正しい?~官能評価の方法から考察する~

 

 

以上、本日は、官能評価手法を基にしたお笑いコンテストの審査方法に関する考察でした!

 

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本日のまとめ
・「THE W」は少人数の専門家による評価を行っている(分析型パネル)
・分析型パネルなのに2点比較法を用いている点は好ましくない

・粗品さんのコメント、賛否あるみたいですが個人的にはすごく良かったです
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