みなさん、好きな麺類ランキングベスト3は何ですか?
です。とはいえ全て僅差です。きっと香川出身の人は全員うどんが1位なのでしょう。
ラーメンも、うどんも、原料は同じ小麦粉なのですが、なぜ味があんなに違うのでしょうか?
そして、カップラーメンの美味しさや作り方も不思議です。
というわけで今日は、インスタントラーメンのお話です!
ラーメンの麺はどうやって作るの?
ラーメンの麺である「中華麺」は、「小麦粉」と「かん水」を使うことが特徴です。
「かん水」とは、民主党の菅直人が作った水のことではありません。
「かん水」はアルカリ塩の水溶液で、主成分は「炭酸カリウム」や「炭酸ナトリウム」です。昔、モンゴルの湖(アルカリ塩)の水で作った麺がおいしかったことが、この「中華麺」発祥の由来のようです。
※この「かん水」は「重曹(炭酸水素ナトリウム)」でも代用可能です。
このように、「小麦粉」「かん水」(あと、必要に応じで塩など)を加えて、こねて、麺状に切ると「中華麺」が出来上がります!
なぜ「かん水」を加えるの?
「かん水」を麺に加えると、ラーメンならではのコシや香りが生まれやすくなります。
これには麺のコシとなる「グルテン」が関係しています。「グルテン」は「かん水」と相性が良く、なじみやすいため、「グルテン」の特徴であるコシや伸びをより一層引き出してくれます。
<グルテンとは>
小麦粉の中には、約6~15%のタンパク質が含まれています。
タンパク質のうち、ほとんど( 約85%)は「グリアジン」と「グルテニン」です。
「グルテン」は、「グリアジン」と「グルテニン」という物質が絡み合ってできています。
グリアジン・・・弾力は弱いが伸びやすい
グルテニン・・・弾力は強いが伸びにくい
「グルテニン」と「グリアジン」、2つが結びつくことによって、適度に弾力があり、伸びやすい性質を持った「グルテン」ができます!
小麦を粉砕して(小麦粉として)利用するのは、「グルテン」を形成しやすくするためです。
この「グルテン」の特性のおかげで、ふっくらもちもちしたパンや、こしのあるうどんから、さくっとしたクッキーまで、 小麦粉は多様な料理に利用されています。
(参照:小麦粉調査隊HP)
麺がのびるって何?~なぜ麺が伸びるとおいしくないのか?~
文献によると、「麺がのびる」理由は、大きく以下の2つがあるようです。
1.水分傾斜説
麺の芯に水分がしみ込んで表面との水分差がなくなり、コシが無い状態になることです。
2.でんぷん老化説
小麦粉の主成分は「でんぷん」です。
「でんぷん」に水を加えて加熱すると、ネバネバしてきます。
これを、糊化(α化)と言います。
(お米を炊くことは、糊化(α化)させているのです)
糊化(α化)したでんぷんを、冷やして放置すると、パサパサしてきます。
これを、老化(β化)と言います。
(ご飯を放置するとパサパサになるのと同じです)
「老化」では、「糊化」とは反対に、水分が中から外へ出ていきます(離水)。
以上の「水分傾斜説」と「でんぷん老化説」により、麺はのびると(放置すると)おいしくないのだと考えられます。
(他には、「グルテンの働きが弱くなるから」という説も聞きますが、主には上記2つだと思われます。)
ちなみに「麺が伸びる」とは、ただの例え話ではなく、ほんとに伸びます。水分を吸収するからだと思われます。
(参照:中京テレビ(ラブラボ!)HP)
めんが伸びないために~即席麺はどうやって作る?~
このように、麺を茹でて放置すると、のびてしまうため、普通に保存するとおいしくないです!(+腐ってしまう)。
では、即席麺はどうやって作ってるのでしょうか??
1.瞬間油熱乾燥法
麺を乾燥させれば、水分がほとんどなくなって麺がのびることもなく、保存性も高まります!
では、どうやって乾燥させるのが良いのでしょうか??
そこで考えられたのが、「瞬間油熱乾燥法」です!
これは、加熱した油に麺を入れることによって、水分を飛ばしてしまう方法です。
1958年に、日清食品の創業者であり、「チキンラーメン」の開発者である安藤百福さんが発明しました!
このように、加熱した油に入れて乾燥させた麺を「フライ麺」と言います。
1958年のこの発明以来、この「フライ麺」の製法により、インスタントラーメンが広く普及していきました。
2.熱風乾燥法
熱風で麺の水分を蒸発させて、乾燥させる方法です。これを「ノンフライ麺」と言います。
「フライ麺」と比較すると、乾燥するのに油を使っていないことから
・カロリーが低い
・生麺に近い
ことが長所として挙げられます。
「まるで生めん」という表示がある即席麺は、ほとんど、この「ノンフライ麺」です。
(「ノンフライ麺」には、「熱風乾燥法」以外に、「フリーズドライ(凍結乾燥)法」もありますが、コストや手間がかかるため、市場に出ているノンフライ麺のほとんどは、この「熱風乾燥法」です。)
< ていうか、普通、「乾燥」っていったら「熱風乾燥」でしょ?「フライ麺」とか作らず、はじめから「熱風乾燥」で作ればよかったじゃん!!バーカ >
という、ごもっともな意見もありますが・・・「麺を熱風乾燥する」ことは、とっっっても難しいのです!!
熱風乾燥により、麺全体を同じように乾燥させるためには、
・麺の表面から水分が蒸発させる速度、と、
・麺の中心から外側へ水分が移動する速度
を同程度にしなければいけません。そうしないと、麺が歪んでしまったり、割れたりしてしまいます。
しかし、このように温度や送風環境を制御することは非常に難しいのです。「扇風機みたいなので50℃くらいの風を当てとけばいいんじゃないの?」というような、簡単なことではありません。
さらに、大量生産できるような設備を作ることも難易度が高いと推察されます!
また、「フライ麺」は、油で加熱したときに水分が飛んで、麺の断面に、よく見ると小さな穴があいています。
この穴のお陰で、麺の表面積が大きくなり、「熱湯3分」のように、お湯を入れてから待つ時間が短くて済むのです。麺の表面積が小さいと、麺の中心部まで加熱されずに、待ち時間が長くなってしまいます。
人間も、ちょっとくらい穴があるほうが、穴がなくて完璧な人よりも魅力的ですよね(笑)
このように、麺を乾燥させる技術や麺の表面積を大きくするための技術の詳細は、特に公開されているわけでなく、各メーカーがノウハウとして蓄積していると思われます。(だからこそ、メーカーによって麺のおいしさが違うわけなのです)
3.乾燥させずに、有機酸処理+加熱殺菌
麺を乾燥させると、生麺ぽさが出にくいから、そもそも乾燥させなければ良いんじゃね??という発想から生まれた方法です。麺を有機酸で処理して、パウチで加熱殺菌させることにより、保存性を高めています。
この方法で作られた麺を「生タイプ麺」と言います。
「生タイプ麺」は、その名の通り、乾燥させていないので、生麺に匹敵する食感があります。
初代「日清ラ王」は「生タイプ麺」です。
しかし、、、上述した「ノンフライ麺」の技術向上により、昨今、「生タイプ麺」の優位性が失われていきました。
そして2010年、「生タイプ麺」である、初代「日清ラ王」が販売中止となり、日清ラ王が「ノンフライ麺」に移行したことからも分かる通り、「生タイプ麺」は市場の第一線から姿を消しつつあります。。
以上、即席麺には①フライ麺、②ノンフライ麺、③生タイプ麺、があり、特徴をまとめると下図になります。
(参照:即席めんの日本農林規格に係る規格調査結果)
即席麺の種類ってほんとにこれだけ?そもそも、蒸してから乾燥する必要あるの?
鋭いですね、、、もう書き疲れたので終わろうと思ってたのですが^^
蒸さずに「生麺」のまま乾燥させて作る「乾麺」と言われるものもあります!
有名な「棒ラーメン」は、この「乾麺」です。
即席麺と違い、蒸してない(糊化してない)ため、しっかりと茹でて調理する必要があります(熱湯いれるだけではダメ)。
しかーし、プロセスから考えても、生麺に最も近いと言えます(生麺を乾燥させただけなので)
パスタの麺(乾いてるやつ)のラーメン版ですね。
マルちゃん正麺は、どのタイプの麺なの?
発売1年で2億食を突破した大ヒット商品「マルちゃん正麺」は、「生麺うまいまま製法」という(メーカーが命名してる)作り方なのですが、これは具体的にはどのような製法なのでしょうか??特許を読んでみました・・・
調べた結果、「マルちゃん正麺」は、
・蒸さずに
・高温(130℃くらい)で乾燥
させているとのことです!
つまり、
・「ノンフライ麺」に近いけど、蒸してないから生麺により近い食感、で、
・高温で乾燥することにより、でんぷんが糊化(α化)することから、「乾麺」と比べてゆで時間が短くて済む
のが特徴です。
「マルちゃん正麺」、おいしいですよね。
「ノンフライ麺」の製法よりも更に高温で短時間での乾燥なので、麺が割れたり歪んでしまうリスクが高いと思われますが、すごく工夫して上手に作れる方法を見つけたのだと思います!(特許に書いてないのでノウハウとして蓄積しているはずです)
「乾麺」と「マルちゃん正麺」(のような製法)を追記してまとめると、下図になります!
おまけ:「かやく」って何の略なの?
この「かやく」、火をつけても爆発しないので安心してくださいね(笑)。
これ、何の略なのか知ってますか??
これは、「乾燥野菜くず」の略なのです・・・というのはデマです!!
正しくは、「加薬」、つまり、「薬味を加える」という意味です。(私は一時期デマを信じていました^^)
ちなみに私は「人間のくず」だと陰で言われてる噂がありますが、これもデマでしょう(笑)。
というわけで、インスタント麺も、メーカーが工夫を重ねて美味しくなってることが分かりましたね!
たまには食べてみて、ラーメン屋さんとの味の違いを比べてみましょう!
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本日のまとめ
・ラーメンの麺は「かん水」を使って作る
・即席麺は、①フライ麺、②ノンフライ麺、③生タイプ麺、に分類される
・「マルちゃん製麺」は、蒸さずに高温で乾燥させることにより、生麺ぽくておいしい
※この「マルちゃん」は元巨人のマルティネス選手のことではない
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参照:木下製粉株式会社HP