私たちは、チョコを食べると「甘い」と感じます。
塩を舐めると「しょっぱい」と感じます。
なぜでしょうか?
このような様々な味の違いについて、どこで、どのようなメカニズムで感じ分けているのでしょうか?
今回お話しする「味覚受容体」は、わりと最近になって分かってきた分野でもあり、非常に奥が深く、まだ解明されていない部分もあります。将来、より一層、解明が進むことが期待されます。
今回はちょっと難しめの内容ですので、読んでる方が途中で寝てしまわないように、なるべく分かりやすいく、シンプルに、笑い(面白くないことで定評がある)も交えつつご説明させていただきます!
味を感じるメカニズム
味覚(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の基本五味)は、味蕾(みらい)と呼ばれる細胞の集合体によって感知されます。
※味蕾は、主に舌に存在します。
味蕾は数十~百個からなる「味細胞」と呼ばれる細胞の集合体であり、5つの基本味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)はそれぞれ別の味細胞で受容されます。
「味覚受容体」は、味細胞の先端に発現しています。
ここまでの話をまとめると
味を感じるのは、舌に多くある「味蕾」
⇒「味蕾」は「味細胞」の集合体
⇒「味細胞」の先端にある「味覚受容体」で味を感知
ということですね!
味覚受容体
ヒトの味覚受容体には、大別すると
・7回膜貫通型の「Gタンパク質共役型受容体」
・「イオンチャネル型受容体」
があります。
Gタンパク質共役型受容体とは?
ミカさん「なんか、Gタンパク質共役型受容体とかいう謎のワードが出てきたわ」
みかくん「そうだね、一般の人にはよく分からないよね」
ミカさん「これは、万引きを取り締まる受容体かしら?」
みかくん「それはGタンパクじゃなくて万引きGメンだね」
ミカさん「ちなみに、Gメンとは、本来はアメリカ政府組織の特別捜査官の通称(政府=GovernmentのG)らしいわ」
みかくん「どうでもいい情報ありがとう」
ミカさん「ちゃんと説明すると、Gタンパクは腕時計のことよ」
みかくん「それはGショックだね」
ミカさん「ちなみにGショックのGは、重力=Gravityのことらしいわ」
みかくん「どうでもいい情報をよく知ってるね」
ミカさん「正直に言うと、Gタンパク共役型受容体のことはどうでもいいのよ。覚える必要なし」
みかくん「え、そうなの?なんかショックだ・・・」
ミカさん「これが本当のGショック」
みかくん「・・・・」
どうでもよい情報ばかりになってしまい恐縮ですが、ミカさんの言う通り、特にここではGタンパク共役型受容体について詳細を覚える必要はありません。。。(そういうものがある、くらいで大丈夫です)
<補足情報>
Gタンパク質は、グアニンヌクレオチド結合タンパク質の略称。
Gタンパク質共役受容体は、生体に存在する受容体の一つ。細胞外の神経伝達物質やホルモンを受容し、Gタンパク質を介してシグナルを細胞内に伝える。
甘味、うま味受容体
甘味受容体、うま味受容体はいずれも7回膜貫通型の「Gタンパク質共役型受容体」のグループに属しています。
これらの味覚受容体タンパク質は、その構造から、
T1Rファミリー(taste receptor type-1;大きな細胞外領域を持つ)
T2Rファミリー(taste receptor type-2;大きな細胞外領域を持たない)
の2種類に大別できます。
T1Rファミリーは
・T1R1
・T1R2
・T1R3
の3種類が存在しており、
甘味受容体:T1R2とT1R3の組み合わせ
うま味受容体:T1R1とT1R3の組み合わせ
で構成されています。
苦味受容体
苦味受容体も、甘味・うま味受容体と同じく、7回膜貫通型の「Gタンパク質共役型受容体」のグループに属しています。
但し、苦味受容体は甘味・うま味受容体と違い、T2Rファミリーです。
T2Rファミリーには多くの種類があり、ヒトでは26種類の遺伝子があることが報告されています。
※参考:味覚の良さは遺伝子が関係してる?~苦味遺伝子~
続いて、塩味受容体と酸味受容体の説明です。
塩味受容体と酸味受容体はどちらも、「イオンチャネル型受容体」になります。
イオンチャネル型受容体とは?
ミカさん「イオンチャネルとか、また意味不明なワードが出てきたわ」
みかくん「そうかな、これは分かりやすいと思うけど」
ミカさん「これは、ホテルのテレビにあるやつかな?」
みかくん「え?どういうこと?」
ミカさん「ほら。ホテルのテレビには、ホテルの案内しかしないチャンネルがあるじゃない。あれみたいに、イオンチャネルはイオンモールの案内しかしないチャンネルのことよ」
みかくん「そんなマニアックなチャンネルはないと思うよ」
ミカさん「イオンチャンネル見てたら、イオンにシャネルのバッグが売ってるって言ってたわ」
みかくん「それはイオンシャネルだよ。それに、イオンにシャネルは売ってないよ」
ミカさん「英会話は?」
みかくん「イーオンだよ」
ミカさん「ドラクエで、爆発する呪文ね」
みかくん「それはイオだよ」
ミカさん「”ずん”の売れてるほうのことね」
みかくん「それは飯尾だよ。イオンチャネルと飯尾さんを間違える人はじめて見たよ」
<補足情報>
イオンチャネル(ion channel)とは、細胞の生体膜にある膜貫通タンパク質の一種で、イオンを透過させるタンパク質を指す。細胞の膜電位の維持、変化、イオン流出入に関与する。
塩味受容体
味噌汁は適度に塩味があって美味しいですよね?
反対に、海水を飲むと、しょっぱすぎて吐き出してしまいます。
このように、塩味受容体には、
①低濃度で美味しく感じるもの
②高濃度で体が拒否反応を示すもの
の大きく2種類があります。
①低濃度で美味しく感じるもの、の受容体は、「上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)」が報告されています。ENaCはイーナックと言います。
※最近の研究では「ENaC」と「CALHM1/3チャネル」を有する細胞が重要だという報告もあります。
②高濃度で体が拒否反応を示すもの、の受容体は、「TRPV1
(transient receptor potential vanilloid receptor1)」が候補の一つと考えられています。
また、高塩濃度の場合には苦味受容体と酸味受容体 が反応することも報告されていますが、詳細はまだよく分かっていません。
塩味受容体は、とりあえず「ENaC(イーナック)」と覚えましょう!
酸味受容体
酸味受容体は、現在もまだよく分かっておりません。
これまで、Transient receptor potential(TRP)チャネルの一種である「PKD2L1」と「PKD1L3」の複合体が候補として報告されています。
※また、Acid-sensing ion channel(ASIC)や、hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated channel (HCN channel) 、またZn2+感受性のH+チャネルなども候補として報告されていますが、どれも詳細には分かっておりません。
とりあえず、(まだ詳細分かっていませんが)酸味受容体は「PKD2L1」と「PKD1L3」の複合体、と覚えましょう!
まとめ
・味覚受容体は「Gタンパク質共役型」と「イオンチャネル型」がある。
⇒「Gタンパク質共役型」には「T1Rファミリー」と「T2Rファミリー」がある。
⇒「T1Rファミリー」には「甘味受容体」と「うま味受容体」がある。
⇒「甘味受容体」は「T1R2/T1R3」であり、「うま味受容体」は「T1R1/T1R3」である。
⇒「イオンチャネル型」には「塩味受容体」と「酸味受容体」がある。
⇒「塩味受容体」は主に「ENaC」が報告されている。
⇒「酸味受容体」は主に「PKD2L1/PKD1L3」が報告されている。
模式図にすると以下のようになります。
以上です!
今日は、これまでの記事の中でもトップクラスに難しい内容でしたね。最後まで付いてきてくださった方、ありがとうございます笑。
たまにはこのように真面目な内容も書いていきたいと思います。
今後ともご愛読のほど、どうぞよろしくお願い致します!
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本日のまとめ
・味を感じるのは「味蕾」という味細胞の集合体
・味蕾の先端に「味覚受容体」がある
・未来の、その先には夢と希望がある
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