ゲノム編集技術で1.5倍に肉厚にした鯛が、今月(2021年9月)にも「ゲノム編集食品」として厚生労働省で受理され、流通・販売が可能となる見込みのようです(参照:讀賣新聞オンライン)。

2020年12月に受理された「GABA高含有トマト」に続いて、日本では2例目のゲノム編集食品となります。

このように、これから「ゲノム編集食品」はどんどん増えていくことが推測されますが、「ゲノム編集食品」の危険性は問題ないのでしょうか?

また、スーパーで売られているが「ゲノム編集食品」なのかどうか知りたいですよね。
「ゲノム編集食品」には表示義務はあるのでしょうか?

今日は、「ゲノム編集食品」の安全性と表示に関するお話です!

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ゲノム編集とは?

ゲノム編集とは、特定のDNA配列を切断できるDNA切断酵素(部位特異的ヌクレアーゼ)を利用してゲノム上の特定の場所を切断することにより、を改変する技術のことです。

以下の記事に詳細を記載しておりますので、まずは以下の記事からお読みいただけますと幸いです。
(参照記事:「ゲノム編集」「遺伝子組換え」「品種改良」「従来法」の違いとは?

 

 

この「ゲノム編集」は
・SDN-1
・SDN-2
・SDN-3
の3パターンに分かれます。

参照:バイオステーション

※SDN:Site-Directed Nuclease(部位特異的核酸分解酵素)

 

 

 

「ゲノム編集」と「遺伝子組換え」については

ゲノム編集・・・DNA切断酵素(部位特異的ヌクレアーゼ)を利用した遺伝子改変
遺伝子組換え・・・別の生物のDNA配列を組込む

という違いがあるのですが、本日示す「ゲノム編集」は、「遺伝子組換えではないもの」という前提で説明させていただきます。
(ゲノム編集であり遺伝子組換えでもある食品は、基本的には「遺伝子組換え食品」として扱われます)

※ゲノム編集と遺伝子組換えはごっちゃになりやすいのでご注意ください。

 

 

 

 

「ゲノム編集食品」の危険性

あくまで個人的な意見となりますが・・・

「ゲノム編集食品」は、まだ現時点で日本で流通もされておらず実績もないことから、100%安全とは言い切れないと思います(世の中に100%で断言できることはほとんどありません)。

とはいえ、ゲノム編集は、「自然界で起こり得る」遺伝子改変を行うものであり、50年以上前から伝統的に実施されている従来の誘発変異(下図)と比較して、危険性が高くなっているとは考えられません。

 

よって、私は、「ゲノム編集食品」の安全性は、従来の食品と同等レベル(つまり、基本的には安全)であると考えます!

 

 

 

 

「ゲノム編集食品」の表示

遺伝子組み換え食品については、表示がありますよね?

 

 

 

では、「ゲノム編集食品」の表示はどうなるのでしょうか?

 

結論から言うと、日本では(現時点で)ゲノム編集は表示義務がありません。
(※ゲノム編集技術を活用した遺伝子組換えの場合は、従来同様の遺伝子組換えの表示が必要です)

 

理由は大きく2つあると考えられます。
1.そもそも、自然界で起こり得るレベルの変異である
2.ゲノム編集技術を活用したかどうか確認しようがない

 

~例~

農家「めちゃくちゃ甘くてイチゴが出来ました!」

査察「おい、これ、ゲノム編集で作っただろ!」

農家「違いますよ、自然に突然変異して、奇跡的に美味しくなったんですよ!」

査察つけ!こんな短期間で、こんな美味しいイチゴを作れるわけないだろ」

農家「いやいや、言いがかりはやめてください、何か証拠はあるんですか?」

査察「イチゴのDNA配列を調べたけど、以前にお前が作ってたものから、一部が変わってたぞ」

農家「いや、それは自然の突然変異でも十分にありうるレベルですよ。人類の進化と同じで、イチゴの自然な進化も素晴らしいですね」

査察「たしかに自然変異の可能性もゼロではないが・・・。でも、お前の会社を捜索したら、ゲノム編集のキットがあったぞ。使ったよな?」

農家「それは、独学でゲノム編集について勉強してるのでキットくらいありますよ。でも、このイチゴを作るのに使ってないですよ」

査察「うむむ・・・。ゲノム編集で作ったという証拠は掴みようがないな」

 

というようなこともあるので、日本では「ゲノム編集食品」の表示を義務化していないと思われます。
(ゲノム編集食品を表示すべきなのであれば、従来の誘発変異で作った食品も表示すべき、とも言えます。)

 

但し、ゲノム編集食品については、国(厚生労働省)への届け出が強く求められています。
※国は強く届け出を求めておりますが、特に規制があるわけではありません。

※参照:厚生労働省HP

 

 

消費者にとっては、「ゲノム編集食品」は名前からして怪しくて危険そうなイメージがあるので、不安になる気持ちもよく分かります。現時点では表示義務はないのですが、もしかすると将来的には表示が必要になるかもしれませんね。

※ちなみに、ゲノム編集食品「不使用」の表示をすることは、厳密には禁止されていません。但し、不使用である根拠のデータを示す必要があり(非常に難しいと思われます)、不使用表示は慎重に判断すべきと考えられています。

 

 

 

「ゲノム編集食品」の表示に関しては、いろんな意見もあり、なかなか判断は難しいと思います。

上述したように「規制したところで、違反の証拠がない」ということもありますが、そもそも自然(天然)の農作物にも毒があったり危険なものはあるわけで、「いかに安全であることを担保して消費者に届けることができるか」どうかが重要なのです。

自然変異でも、誘発変異でも、交配でも、ゲノム編集でも、遺伝子組換えでも、遺伝子が改変されることによって毒性が強くなるリスクはゼロとは言い切れません。このように遺伝子が改変された場合でも、「食べても大丈夫」だと、しっかりと生産者が分析・評価することが大事なのです。遺伝子改変のツールの一つである「ゲノム編集」だけを危険視するのは正しくないと思います。

 

 

個人的な考えとしては、ゲノム編集技術は、計算で例えると「エクセル」のようなものだと思っています。

ゲノム編集技術を否定することは「エクセルで計算した結果は正しいか不安だから、ちゃんと電卓かソロバン(従来の技術)で計算しろ」と言っているようなもので、ゲノム編集技術を拒否していたら、科学的進歩は圧倒的に遅れることになります。

 

アメリカでは、既に、オレイン酸高含有の大豆油が流通されています。
日本でも、GABA高含有トマトが今後流通することになると思います。

そして将来的には、同様のゲノム食品が幅広く製造・販売されることになるでしょう。

 

もし同じ価格の場合、
・A:従来品(従来技術使用)
・B:に良い栄養素がAより高含有だけどゲノム編集技術を使用している
の2種があった時、AとBのどちらを買いますか?

どちらのメリット・デメリットと優先するのかは、消費者の中でも分かれると思います。コロナワクチンと似た状況かもしれませんね。マスコミがどのように報道するかにも大きく影響されるとは思います。

 

 

以上、今日はゲノム編集食品の安全性(危険性)と表示義務に関するお話でした!

将来的に多くのゲノム編集食品が流通された場合、買うべきかどうか判断する時にでも、改めて今日の記事をご参考いただければと思います。

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本日のまとめ
・「ゲノム編集食品」の安全性は、従来の食品と同じレベル(と思います)。
・「ゲノム編集食品」の表示義務はない
・偶然できたものと、狙って作ったものは、どっちが安全?
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