甘味・塩味・酸味・苦味・うま味、の5つの味を「基本五味」と呼びますが、
※参考記事:味の分類~5つの基本味「五味」~
このうち、「塩味」には、他の4つの味にはない特徴があります。
このたび、塩味の特徴・効果について、
週刊女性にて解説・掲載いただきましたのでご紹介させていただきます。
塩味の特徴1
塩味の特徴の1つ目として、
「塩味物質」が1つしかない
ことが挙げられます。
他の4つの味には、以下のように様々な物質が「味を感じるもの」として存在します。
甘味物質・・・砂糖、ブドウ糖、果糖、その他甘味料 など
酸味物質・・・クエン酸、酢酸、リンゴ酸 など
苦味物質・・・カフェイン、キニーネ など
うま味物質・・グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸 など
しかし、塩味物質は、塩(食塩)のみなのです!
※塩味+苦味などの複合的な味は食塩以外でも感じることができますが、
純粋な塩味は食塩だけと考えられています。
※参考記事:塩味の基礎知識~味噌汁に入れる最適な食塩の量は?~
つまり、
「甘味」と言ってもケーキの甘さだったり果物の甘さでは味が異なり、
「苦味」と言ってもコーヒーの苦さとビールの苦さでは違うものなのですが、
「塩味」と言えば必ず食塩の味のことを指す、と言うことができます。
これは、5つの味のうち「塩味」だけが持つ大きな特徴の1つと言えますね。
塩味の特徴2
食べ物には、食べ合わせることで味の感じ方が変わるものが存在します。
この味の食べ合わせ効果には、主に以下の3つのものが挙げられます。
対比効果・・・2種類以上の異なる味を混合したときに、一方または両方の味が強められること。
抑制効果・・・2種類以上の異なる味を混合したときに、一方または両方の味が弱められること。
相乗効果・・・同じ味をもつ2種類以上の呈味物質を混合したときに、相互に味を強め合うこと。
※参考記事:なぜスイカに塩をかけるの?~隠し味の秘訣「対比効果」「抑制効果」「相乗効果」「変調効果」~
このように、2つ以上のものを食べ合わせた時に、
一方の味を強めたり、弱めたり、あるいは相互に味を強め合ったりする効果があるのです!
これらの効果は、どの味を組み合わせても成立する、という訳ではなく、
いくつかのパターンが決まっています。
【対比効果の例】
スイカに塩を入れると甘く感じる。(甘味+塩味)
【抑制効果の例】
コーヒーに砂糖を入れると苦さが抑えられる。(苦味+甘味)
【相乗効果の例】
昆布だしにかつおだしをあわせるとうま味が強められる。(うま味+うま味)
このように、対比効果、抑制効果、相乗効果を生むための味の組み合わせは
ある程度パターン化されているのですが、
塩味は、他の4つのすべての味に対して効果が発揮される、という特徴があります!
塩味+甘味・・・・対比効果(例:スイカに塩をかけると甘味が増す)
塩味+うま味・・・対比効果(例:塩味のあるお吸い物にダシを入れるとうま味がより際立つ)
塩味+酸味・・・・抑制効果(例:魚の塩焼きにレモンをかけると塩辛さが抑えられる)
塩味+苦味・・・・抑制効果(例:コーヒーに塩を入れると味がまろやかになる)
なお、先ほど「塩味の特徴1」にて、塩味物質は塩(食塩)しかない、と述べましたので、
つまり、
塩は、他の4つの味すべてに対して食べ合わせの効果を発揮する!
と言い換えることができます。
これは塩味(塩)が持つ非常に面白い特徴だと思います。
このような塩の持つ効果・特徴について、
週刊女性(2021年8月10日号)にてご取材・掲載いただきました。
関係者の皆様、大変お世話になりました。ありがとうございました。
日本味覚協会では、今後ともこのような取り組みを通じて味覚に関する普及活動に努めてまいります。
取材・メディア出演、その他お問い合わせのご連絡は、
お気軽に「お問い合わせ」ページよりお願い致します。
よろしくお願い申し上げます。
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本日のまとめ
・塩味物質は塩(食塩)しかない。
・塩味は他の4つのすべての味に対して食べ合わせの効果を発揮する。
・塩分の摂り過ぎには注意しましょう。塩対応もしないように注意しましょう。
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