味覚診断イベントを実施すると、参加者の方から
「どうしたら味覚を良くすることができるんですか?」
とのご質問をお受けすることが多いです。
これは、とても難しい質問です。難しいからこそ、ずっと考えている問題でもあります。
今日は、「味覚を良くする方法」の一つについて、私が考えていることをお話します!
味覚は、味蕾(みらい)と呼ばれる、味細胞の集合体によって感知されます。
この味蕾の数は、ヒトは1万個くらいあるのですが、年を重ねるにつれて、徐々に減少することが知られています。
参照:「味覚は衰える?~年齢と味蕾の数の関係~」
よって、年を重ねるにつれ、味蕾が少なくなり、味覚感度が低下することが予測されます。
当協会で実施した味覚診断の結果と年齢の関係を見てみましょう。
味覚は、20代が一番良いです。
20代以降は年を取るにつれ、味覚感度が低下していく傾向があります。
これは、年を取るにつれ、味蕾細胞の量が減少することが要因の一つであると考えられます。
一方、20歳未満の方は、味覚診断の結果が悪いです。
これはなぜでしょうか?
これは、20歳未満の方は、
・味に関する知識や経験が足りない
ことが原因であると考えます。
また、調理師や栄養士の方、家庭科の先生、また食品関連の仕事をしている方は味覚診断の点数が高い傾向があります。
やはり、日頃から「食」に関わり、いろんな味に接している人ほど、味覚感度が高いようです。
つまり、
「経験」「知識」「トレーニング」によって、味覚が向上すると考えられます!
・「味の違いが分かる人」と「色の違いが分かる人」
さて、そこで問題です。
<第1問>
下のA、B、Cの色は、全部同じだと思いますか?違うと思いますか?
Aだけ明らかに違うことは分かると思います。
では、BとCは違うでしょうか?
・RGBカラーモデル
色の表現法の一種に、RGBカラーモデルというものがあります。
これは、赤(Red)、緑 (Green)、青 (Blue) の三つの原色の混ぜ具合により、幅広い色を表現するものです。
赤、緑、青すべてを適量に混合すると白(255, 255, 255)になり、何も入れないと黒(0, 0, 0)になります。
エクセルやパワーポイントを駆使してる方は、色を変更する時に、上のような画面を見たことがありますね。
さて、上記の問題について、
このRGBカラーモデルに基づくと、
A(255, 0, 0)
B(235,118,21)
C(238,112,18)
となり、全て異なります。
BとCは似ていますが、Bのほうが、なんとなく黄色に近いオレンジ色ですね。
続いて、
<第2問>
下の色は、第1問でいうA、B、Cのうちのどれでしょうか?
これは、かなりの難問・・・
自信を持って答えられるでしょうか??
<答えと解説>
答えは、C(238,112,18) でした!
多くの方が、BとCで迷ったと思います。
なぜBとCの違いを見分けることが難しいのでしょうか??
これは、普段、
Bを見た時⇒「オレンジ色」
Cを見た時⇒「オレンジ色」
と同じように認識しており、日頃から、BとCの違いを分ける「表現法」を使っていないからだと考えられます。
カラーコーディネーターの方や色彩検定を受けている方で、100種類以上の色の名前を知っていて、それぞれ違いを区別できる人なら、上記のBとCも区別できるのではないでしょうか。
・ボンカレーとカリー屋カレーの違い
あるカレーを食べて
これは、「ボンカレー」と「カリー屋カレー」のどっちでしょう?
と聞かれた時に、当てることができますか??
多くの人が、自信を持って当てることができないと思われます。
なぜでしょうか?
それは、「ボンカレー」「カリー屋カレー」どっちを食べた時も、「カレーの味」としか認識していないからです!!
みなさん、ボンカレーを食べたことがあるでしょうか?
ボンカレーを食べて、「どんな味?」と聞かれたら、何と答えますか?
同様にカリー屋カレーを食べた時に、
「どんな味?」と聞かれたら、何て答えますか?
どっちを食べた時でも、「まあ、カレーの味だよね」とか「おいしい」とかだけだと、「ボンカレーもカリー屋カレーも感想同じやん!」となります。
それでは、当然、違いを認識することはできません。
これは、上述した「色」の問題に例えるならば、ボンカレーもカリー屋カレーもどっちも「オレンジ色」で、普段、意識して違いを認識していないから分からないよ!ということになります。
つまり、普段から、微妙な味の違いを「意識」できているかどうか、が重要ということです。
・カレーの味の違いを「意識」するための良い方法は?
私がオススメする方法は
「禁止ワードの設定」です。
「カレー」という言葉を使わずに、カレーの味の感想を言ってみましょう!
・辛い
・うま味がある
・コクがある
・ハヤシライスっぽいトマト感がある
・砂糖の甘さがある
・ジャガイモの食感がぐちゃっとしている
などなど、自分が感じた味の感想で構いません。思ったことを口にするだけで、細かいところまで違いが見えてくるはずです。
味覚感度は人ぞれぞれですし、この感想が、他人と違っても大丈夫です。自分の中で明確に違いが分かればいいのです。
「食べた時の感想を言うコツ(グルメレポートのコツ)」や「味の表現方法」の詳細については、後日、「味覚を良くする方法を考える(その②)」でお話したいと思います!!
・味覚向上のためには「おいしい」と言っちゃダメ
みなさん、誰かとご飯を食べた時に、なんて感想を言いますか?
私は、ほっとんど、「おいしい」と言います。
言い方を変えると、「おいしい」しか言わないです。(あとは、たまに「甘い」とか「すっぱい」とかくらい。)
「おいしい」は魔法の言葉で、この言葉を言うだけで周りはみんな幸せになります。
だからこそ、禁断の言葉なのです!!
「おいしい」という言葉だけで満足してしまうので、それから、更に「味の微妙な違い」を意識しようとしなくなってしまうのです!!
※逆に「まずい」と言っていいわけではありません。「まずい」という言葉はリアル禁断ワードです。「どうまずいのか?」を作った人に聞かせるのは危険です。注意しましょう。
私の友人に、すごくグルメで、味に詳しい人がいます。
その友達と一緒にご飯を食べて、私が「これ、おいしいね」と言うと、必ず、「どうおいしいの?」と聞き返してきます。
そう聞かれると、困ってしまいます。「なんとなくおいしい」と言うと「なんとなくって何さ。これだからダメなんだよ」とダメ出しされます。
正直、ご飯を食べる時くらい、何も考えずに食べたい!と思ってしまうのですが、それでは、味覚は向上しません。「どうおいしいか?」を考えるのは「トレーニング」なので疲れます。しかし、この「トレーニング」によって味覚は向上するはずです。
1日は3食もあります。
ぜひ、みなさんも、これから、1日に1食だけでもいいので、「どうおいしいのか?」を考えながら食べるようにしてみましょう。
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本日のまとめ
・「味覚を良くすること」は、「自分の色鉛筆の種類を増やす」ようなもの
・「どうおいしいのか?」を考えながら食べましょう!
・奥さんの料理を「まずい」と言うと、いろいろマズイ。
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