味覚は、食生活に大きく影響されると考えられます。
毎日、家で味の濃い味噌汁を食べていたら、食堂で薄めの味噌汁を飲んだ時に物足りなく感じることでしょう。
つまり、家族の味覚は似てくると考えられます!
ですが・・・これは本当でしょうか?
また、母親と父親、どっちの味覚が似るのでしょうか?
今日は、そんな疑問に答える文献をご紹介します!
同じ料理でも、家庭によって、味付けは大きく変わります。
例えば、「カレー」や「肉じゃが」で用いる肉についても、”牛肉”の家庭もあれば、”豚肉”の家庭もあるでしょう。
(参照:「カレー」「肉じゃが」の肉は牛肉?豚肉?~関西と関東の肉文化の違い~)
ほぼ毎日同じ料理を食べてる家族なら、味覚は似てくるのでしょうか?
特に、親と子供は、味覚が似そうな気がしますが・・・本当のところはどうなんでしょうか?経験上、びっくりするほど似てる親子を見ることが多いですが・・・たまに、全然似てない親子もいます笑。
今日はそんな疑問を解決するために、「親子間における味覚の類似性」という文献の内容をご紹介します!
(参照:親子間における味覚の類似性)
※日本調理科学会誌(Vol. 46,No. 2,114~120(2013))
親子間における味覚の類似性
調査方法
<調査対象>
主に大学生の子を持つ家庭69組、合計277名を対象としました。
(すべての親子の組み合わせは259 組)
<対象の食べ物>
・一般的に家庭で食べられている
・冷凍保存が可能(長期休暇に帰省する人に依頼できる)
・解凍しても味を損なわない
・季節によって品質のばらつきが少ない
・味付けの違いがわかりやすい
等の条件を考慮し、
「ひじき煮」を対象の食べ物に選定しました!
(写真参照:白ごはん.com)
<味付け>
ひじき煮の味付けは
・うす味
・甘い味
・塩からい味
・濃い味
の4通りとしました。
<調査方法>
・4種の味のひじき煮を50 gずつパックして冷凍
・家庭に持ち帰り、解凍
・家族で試食
・各自「おいしい」と思ったひじき煮を選択
調査結果
選ばれたひじき煮について、すべての親子間における一致率は全体で49.0%(約半数)でした。
「母親」と「娘」の味覚の嗜好は一致率が高い傾向がありますね!
反対に、「父親」と「娘」は、一致率が低いです(笑)。
なお、調査対象者の中から無作為に2名、259組を選んでその一致率を算出すると31.9%となります。親子間における一致率は、それよりは高く、P値を考慮しても有意差のある結果でした。
(※P値?有意差ってなに?という方は、”世界一わかりやすい「統計解析」の基本~有意水準と有意確率(P値)とは~” の記事をご参照ください。)
ですので、親子の一致率は半分くらいしかないですが、「他人と比較すると親子の味覚は似ている」とは言える結果になります。
ちなみに、結果の詳細は下の図になります。
また、併せて、「手作りの総菜」と「市販の総菜」のおいしさについてもアンケ―トしました。
ひじき煮に対する嗜好が
・一致していない親子⇒市販の惣菜を「おいしい」と評価
・一致している親子 ⇒市販の総菜を「おいしくない」と評価
との結果となりました。
よって、「市販品の食べ物への慣れ」が「親子間の嗜好」に影響している可能性が示唆されました。
つまり、
よく手作りをする(市販の総菜をマズいと感じてあまり食べない)⇒親子の味覚が似ている
ということですね。
まあそうだよね、という結果とも言えますが、データとして立証できたのは素晴らしいと思います。
要約
今回ご紹介した「親子間における味覚の類似性」の文献では、4種に味付けしたひじき煮を用いて家族の味覚嗜好の類似性を調査し(またアンケートで食生活調査も行い)、家庭内における味覚嗜好の伝承の実態やそれに与える要因について検討を行いました。
その結果、
① 親子で同じひじき煮を選んだ割合は、他人同士よりも高かったものの、一致・不一致の割合は半々(約半数の親子では味覚嗜好は伝承していない)
②ひじき煮に対する親子間の嗜好の類似性は、母子間、 父子間ともに認められたが、母子間の類似性の方が高かった(母と娘の類似性が最も高かった)。
③親子のひじき煮に対する嗜好が一致していない親子の方が市販の惣菜類への評価が高く、市販品への慣れが、嗜好の不一致に影響している可能性が考えられた。
以上となります!
今後も、おもしろい内容の文献について、(なるべく分かりやすい形にして)どんどんご紹介させていただきたいと思っています!
今後ともよろしくお願いいたします!
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本日のまとめ
・親子の味覚は、(他人と比較して)似ている
・市販品の総菜を好んで食べる家庭では、親子の味覚は一致しにくい
・おや?親の味覚がおかしい!おやおや困った、私の味覚もおかしいかも
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