みなさん、「DHMO」という化学物質をご存知でしょうか?
この「DHMO」は、
- 酸性雨の主成分であり、温室効果を引き起こすことも知られている
- 高レベルのDHMOにさらされることで植物の成長が阻害される
- 末期癌の腫瘍細胞中に必ず含まれている
- この物質によって火傷のような症状が起こることがあり、固体状態のDHMOに長時間触れていると皮膚の大規模な損傷を起こす
- 原子力発電所で大量に使用される
- 多くの金属を腐食・劣化させる
- 一度に大量に吸引すると死亡するリスクがある
ことが知られています。
この「DHMO」を、食品添加物として認めても良いと思いますか?
これは、1997年、ネイサン・ゾナー君という14歳の少年(少年なのにネイサン)が書いた「我々はどのようにしてだまされるのか」というタイトルのレポートに記載されているものです。彼は、この「DHMO」という化学物質の害を指摘し、この物質の使用規制を求めて周囲の50人の大人に署名を求め、うち43名のサインを得ることに成功しました。
さて、鋭い方ならお分かりですね。
DHMO( dihydrogen monoxide )は和訳すれば一酸化二水素、要するに、ただの水(H2O)です。上記の説明について、DHMOの性質について隠していることはあっても、嘘はひとつも入っていません。
ただの水であっても、わざと、危なそうな事柄だけをピックアップすることで、いかにも危険な化学物質のように見え、規制の対象とさえなりかねないという・・・。「イメージ」の重要性を考えさせられる話です。
例えば、透明な液体の入ったコップを渡されて、「水だよ」と言われたら普通においしく飲めますが、「一酸化ニ水素という化学物質だよ」と言われたら、なんか危なっかしくておいしく飲めません。
食べ物は、特に、「イメージ」によって、感じるおいしさが変わってしまいやすいのです!
さて、余談が長くなりましたが・・・
私が愛飲しているサントリーのウーロン茶の原材料表示を見ると、「烏龍茶、ビタミンC」と書かれています。
ウーロン茶には、ビタミンCも入っているのです!
また、伊藤園さんのお茶の原材料表示からも分かる通り、どのメーカーでも、市販されているほとんどのお茶には「ビタミンC」が含まれています。
・「ビタミンC」って何?
ビタミンCとは、化学的にはL-アスコルビン酸のことです。
<ビタミンCの特徴>
・皮膚や粘膜の健康維持を助ける(コラーゲン合成に関与)
・抗酸化作用がある(活性酸素を除去)
・ヒトは体内で合成できない(食事から摂取する必要あり)
ビタミンCが不足(1日あたり約100mg未満)する生活を続けると、欠乏症を引き起こす可能性があります。
・なぜ烏龍茶に「ビタミンC」を入れているのか?
ビタミンCの抗酸化作用を生かし、「酸化防止剤」として入れるのが主目的と推察されます。
お茶は、酸化しやすいのです。
他の目的としては、「本来のお茶の葉に含まれているビタミンCは、製造過程で失われてしまうため、補うために添加している」とも考えられます。
・表示に「酸化防止剤」って書いてないけど、書かなくてもいいの?
「酸化防止剤」の目的で添加する場合は、「酸化防止剤」と表示する必要があります。
しかし、「ビタミンCを補うために添加している」のであれば、(酸化防止剤としての機能があったとしても)「酸化防止剤」とは書かなくても良いです。
食品の添加物表示に関して、原則として、
・使用した全ての食品添加物を「物質名」(別名、簡略名、類別名も可)で食品に表示する
ことが義務付けられています。
ビタミンCは、物質名はL-アスコルビン酸ですが、別名、簡略名、類別名でも可であるため、
・アスコルビン酸
・ビタミンC
・V.C
と表示することが可能です。
但し、主に3つの例外があります。
1.一括名で表示可
・イーストフード
・ガムベース
・かんすい
・苦味料
・酵素
・光沢剤
・香料または合成香料
・酸味料
・軟化剤
・調味料(例:調味料(アミノ酸等))
・豆腐用凝固剤又は凝固剤
・乳化剤
・水素イオン濃度調整剤又はpH調整剤
・膨張剤、ベーキングパウダー又はふくらし粉
指定された用途で(現在は14種類の用途)、定められた範囲の添加物を使用する場合は、一括名で表示することが認められています。
2.用途名も併記
・甘味料
・保存料
・着色料
・酸化防止剤 など
消費者の関心が高い添加物について、使用目的や効果を表示することで、消費者の理解を得やすいと考えられるものは、用途名を併記。
例:甘味料(サッカリンNa)、着色料(赤色3号)、保存料(ソルビン酸)
(追記・修正)
現在のルールでは、以下に示す8種については、用途名併記が必須となっています。
3.表示免除
・加工助剤
・栄養強化剤 など
最終食品に残存していない食品添加物や、残存してもその量が少ないため最終食品に効果を発揮せず、効果発揮を期待されていない食品添加物については、表示が免除されます。
つまり、2.用途名も併記. からビタミンCを「酸化防止剤」として添加している場合は、「酸化防止剤(ビタミンC)」のように記載することが必要です。(実際に、「酸化防止剤(ビタミンC)」と記載してあるものも多いです)。
但し、ビタミンCを酸化防止剤として添加していない場合(例えば、栄養強化の目的で添加している場合)、用途名を併記する必要がなく、物質名さえあればよいのです。(厳密には、栄養強化の目的で添加する場合は、表示自体を省略可能)
・同じものでも別の表示だったら、イメージ変わる?
この
・「ビタミンC」
については、酸化防止剤の目的で添加しているのであれば、
・「酸化防止剤」(L-アスコルビン酸)」
のように表示する必要があります。
ただ、一般的に、「酸化防止剤」や「L-アスコルビン酸」などの化学物質ぽい名前は、食品としてのイメージが良くないので、なるべくイメージが良いように、「ビタミンC」と表示することが多いと推察されます。(栄養強化の目的で使用している、と考えれば、酸化防止剤とは書かなくてよい)
なるべく食品添加物を摂らないように気をつけている人が、
「このパン、酸化防止剤が入っているから買っちゃダメだ!」
と言いながら、
「ビタミンCは体にいいからたくさん摂らなきゃ」
と言ってサプリメントを買っていたら、「イヤイヤ、中身同じだから!!」と突っ込んであげてください。
・イメージのポジティブ化
中身や本質が同じだとしても、「イメージ」によって感じ方が大きく変わるので、いかにイメージを良くするか?(つまりイメージのポジティブ化)が、新商品を作る上での一つの大事なテーマとなります。
「天然」「自然」というワードはイメージが良く、「人工」「化学的」という言葉はイメージ悪いので、
ややもすれば「天然の毒」よりも「人工甘味料」のほうが危険だと感じてしまいます。
また、「あそこの店は、食中毒が頻発したらしいよ」と噂が出たら、その真偽に関わらず、売上は激減するでしょう。
「人」も同様です。
「性格が悪い」というイメージになると、大変です。イジメにもつながりかねません。
なるべく、周りの情報やイメージに左右されずに、客観的に物事を判断できるようになりたいな、と思っていますが、なかなか難しいですね・・・。
そして、私も、「酸化防止剤」のような悪いイメージではなく、「ビタミンC」のような良いイメージの人になれるよう頑張りたいと思います!
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本日のまとめ
・お茶にビタミンCを入れるのは、酸化を防ぐためと思われる
・「酸化防止剤(L-アスコルビン酸)」と「ビタミンC」は、同じ
・イメージ悪くなるとイジーメられる
・つまらないギャグを言うとイメージ悪くなる
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参照:超危険な化学物質DHMOの正体とは?ビジネス寓話50選
参照:消費者庁HP
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